小林多喜二を読んだ話(活動再開のお知らせに代えて)
だいたい冬の間は、作品を発表せずに潜っていて、
春になるともぞもぞ這い出すんですけど、今年もそろそろ。もぞもぞと。
正直この冬はロクなものが書けなくて、多少投げやりな気分で春を迎えつつあるんですが、一方でインプットの方では色々出会いがあったなあ、とか、そんな話です。
端的に言うと、年末くらいから唐突に小林多喜二にドハマりしておりました。経緯はあとで腐りながら話しますが、これまで積極的に避けていた作家です。プロレタリア文学というものに正直偏見があったというか。左方向の方々については、学生時代の個人的なみみっちい恨み言とかがありましてまあそれはいいんですが。
プロレタリア、という言葉を意図的に忘れて読んでみたら、私が求める北国の風景がそのままそこにあってビックリしたのでその話をしたいんだ...。
これまで多喜二は「蟹工船」で終わっていたんですけど(それも途中で飽きてやめてたんですけど)、「不在地主」「防雪林」あたりに手を出してみたら、北海道の自然描写が圧巻で、思いっきり打ちのめされたのでした。
たぶん「土臭さ」みたいなもの。雪の下に土があり、見えなくとも匂いがする。そういう感覚に、見たいと思っていた景色を見せてもらったような気がしました。
北国、という言葉から連想される光景の中で、冷たく空気が澄んで星が綺麗に見えてどこまでも真っ白で静か、というだけでは物足りない何か。人間にはどうにも出来ないもの、人間ではないものの息遣い。
北海道の厳しい自然と、そこで生きている貧しい人に対する深い愛情が感じられて、素直に胸を打たれるんですけど、今までそういう風に読もうとしたことはなかったなあ、と、「プロレタリア」という言葉のややこしさに、ちゃぶ台返したくもなったのでした。いいものを見た...。
で。
ここまで活動再開のご挨拶にかすってもいないんですが、今年も活動再開します。
今年のキャッチコピーはまだ考えてるんですけど、
何かしら、上記のあれこれを踏まえた感じのにしたいような。土臭さ。みたいなの。
今年も色々やりたいことが沢山あり、
ひとまず、5月の関西コミティアに新刊を、と、思っていたり、
その間にコマゴマしたものを何か出せたら、とも。
今年もまた、よろしくお願いします。
以下蛇足。
ところで、現在プレイ中のDMMのゲーム「文豪とアルケミスト」なんですが。
当初は織田作ちゃんや中島敦(もともと好きな人たち)を一通り愛でたあとは「もうやることないな」と思っていたんですが、ノーマークだった多喜二があまりにも大好きな感じの男子で、「こんな子いたんだ」くらいのアレから素直にハマった結果が上記になります。
いや、でも、調べれば調べるほど、生前の多喜二が愉快なお兄さんで、私がハマった文アルの多喜二からは離れていくんですけど、それはそれで「あ、この間に色々あったんだな」という適当な妄想を捏造できるのでいいんじゃないでしょうか。志賀直哉との繋がりとか全く知らなかったので(そもそも多喜二に興味なかったので)、新たな萌えを発見した気分ですが、萌えと呼ぶにはあまりにも激重すぎて、「尊い…」とため息をつく日々を送っております。
この辺についてはそのうちまた語っていると思う。
【テキスト】今年の読書ダイジェスト2016
時系列に沿って今年の読書を振り返るアレ。
今年は、アグレッシブに新しい本を探し回った記憶はあまりなくて、どちらかというと、今必要としている本を本棚から引っ張り出すことが多かったような気がします。
過去に読んだ本に助けられた1年と言ってもいい。読書はそれ自体がひとつの経験だな。などといきなりまとめに入ったけど、これからだから。まだ始まってないから。ではどうぞ。
前年秋から続く"ひとりドストエフスキー祭"ですが、冬が終わる頃まで続いておりました。この時期、仕事が忙しすぎて「ロシアに逃亡したい」とか言ってた。なお、CP的にはシャートフくん×スタヴローギンを推しております。「尊い」という言葉がここまで似合うCPもなかなかない…などと...1つめから何言ってんだろうな...。
中島敦(『山月記』『かめれおん日記』『光と風と夢』)
辛くなったら中島敦を読もう。
つまり色々辛かったんだな。春先のことでした。まあ色々ありました。まだ色々あるし、最近もたまに読み返しています。『山月記』は、ささやかな、ほんとうにささやかな勇気のお話です。『かめれおん日記』は、立ち止まったときに隣に居てくれるお話です。『光と風と夢』は、迷いを振り切るためのお話です。もう10年以上の付き合いです。これからもよろしくな。
『文豪ストレイドッグス』(春河35/朝霧カフカ)
色々あったのが一段落し、稼働調整(残業し過ぎてサブロクに引っ掛かった)という名目でネカフェでサボってたとき読んだもの。さらっと読んで「けっ」ってやるつもりが、なぜか今年のベストオブ沼だった。あとは、現状ご覧のとおりです。現場からは以上です。
安西冬衛
ふと目に留まって興味を持ったものの、現在、全集から何から絶版となっている詩人。萩原朔太郎に評価され世に出たという経緯には、読めば何となく納得する感じの、なんかそういう詩。近所の図書館に全集があった。基本的に本は手元に置きたい派ですが、こういうとき図書館ありがたい。
『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像 』(中沢弘基)
生命の起源を、生命の外側、つまり地質や海、大陸移動説やエントロピーなどまでひっくるめて考えたら、新しい生命史が見えるんじゃない?という本。その視点はなかった、の連続で、読み物としてとても面白かった。
『リリーのすべて』(デイヴィッド・エバーショフ)
「在りたい自分でいさせてくれる」というのは最上の愛情だろう、というのに尽きる。それは許しや受容とは違うし、まして理解とも違う。
ちなみに映画はわりと最近見ました。
『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
「時間は大切だよ」と言われても「知っとるわっ」なんだけど、「自分の時間は、自分で守らないといけない」という言葉には、何かしら打たれるものが。童話だけれど、昔はいまいち分からなかった気がする。それもまた、童話の役割かもしれない。いつか必要になる時のために記憶の片隅で待っている本が、他にもあるかもしれない。夏に実家で発掘してきた本のうちの一冊。
『星は、昴』(谷甲州)
私が想像する宇宙など、まだまだ限定的で狭っ苦しい箱庭だな…とほわほわ。どっかで見かけて読みたくなり、まあ谷甲州なら実家にあるだろうと思ったらやっぱりあった。谷甲州はかたいイメージあるんですけど、これは読みやすかったです。
経緯については何も言うまい。ぴょんぴょんした文体がとても読みやすくて、手持ちの文庫で3周くらい読み返していたのでした。あと、「すっからかんでも結構生きていけるもんだな」みたいな気持ちになるのでとてもよい。何がよいのかは分からんけど。
どうでもいいけど、文ストコラボカバーの『天衣無縫』は収録作品のチョイスが「お前の好きなやつ詰めといたから」感すごかったです。ぜんぶ好きなやつだった。ありがとう角川。
『楽園の泉』(アーサー・C・クラーク/山高昭訳)
遥か遠い過去から、まだ見ぬ世界へと続く、その連続性の美しさ。「今、ここ」から地続きの未来に引き込んでいく力こそ、SFの本質だと思わせてくれる。
クラークの描く世界そのものは、必ずしも美しいものではないし、そこに登場する人々は皆素晴らしい人というわけでももちろんなくて、まあわりと普通に好感が持てたり憎たらしかったりするけれども、ただ物語だからこそ美しいのだと思ったりもしたのでした。〆にちょうどいい(ってのもアレだけど)本が最後に来た。よしよし。
以上、お付き合いありがとうございました。
この先もよい本と出会えることを祈りまして、ひとまず解散。
【(不)定期報告】委託、通販、サイト更新、二次創作のこと
文フリ大阪、ありがとうございました。もう1か月前なんですけど。
ここが週報から月報になりつつあり、もはやお知らせブログとしてどうなん?状態ですが、まとめてこの1か月を振り返ります。
【お知らせ】委託と通販について
文フリ大阪で頒布した新刊『フリンジラ・モンテ・フリンジラ』、
10/30文フリ福岡、い25「常磐屋」様に委託をお願いしております。
九州での頒布機会はあまりありませんので、行かれる方は、ぜひよろしくお願いいたします。
通販につきましては、BOOTHにて、上記10/30文フリ福岡のあと在庫を見て再開します。(既刊は買えます。)
サイト更新しました。
ペーパーに掲載した掌編や、タンブラーに放り込んでいた短いお話のうち、時間がたったものをサイトに収蔵しました。
トップページ(エウロパの海)>「短いお話と絵」からご覧いただけます。
*アイソン彗星の話:http://rosette-nebula.boy.jp/europa/stories/story012.html
*百武彗星とヘール・ボップ彗星の話:http://rosette-nebula.boy.jp/europa/stories/story013.html
*銀行強盗について:http://rosette-nebula.boy.jp/europa/stories/story014.html
*考察:http://rosette-nebula.boy.jp/europa/stories/story015.html
*白夜:http://rosette-nebula.boy.jp/europa/stories/story016.html
ここから下は二次創作の話になりますので、興味ある方のみドウゾ。
二次創作の話
「文豪ストレイドッグス」で相変わらず何かもぞもぞ書いていました。アニメ2週間遅れで見てるんですけど色々しんどい。
9/18文学フリマ大阪、詳細(ようやく)
一週間前になりまして、ようやくまとめて詳細を告知します。
昨日は、なんていうか、途中でめんどくさくなったんだ…。
あらためまして、第四回文学フリマ大阪、D21「エウロパの海」にてお待ちしています。
まだまだ暑い日が続いておりますが、
木星第二衛星、その氷に覆われた冷たい静寂の海に、お立ち寄りください。
◆新刊が出ます。
「フリンジラ・モンテ・フリンジラ」B6/54P/300円
"ねえ、ひとりで生きていこうなんて、思ってはいけないんだよ。
それは君が思っているよりずっと、簡単なことだから。”
家庭教師の青年と、裸足の少年の1年間のお話。
雪の季節に始まり、草芽吹き、夕立の中を駆け抜け、
そして、季節が巡れば終わっていく物語。
冒頭部分をサンプルとしてご覧いただけます。
ブランペイン彗星の足跡 - 【Sample】フリンジラ・モンテ・フリンジラ
◆深海×神話の合同誌「無何有の淵より」に参加させていただいています。
C50「ヨモツヘグイニナ」様にて頒布されます。
参加者として一足お先に中を読ませていただいたのですが、圧倒されるような作品ばかりでなんかもう凄い1冊になっております。ぜひお手に取ってください。
すべての作品の冒頭部分を試し読みできます。
※当スペースで、合同誌が100円引きになる割引券を配布予定です。
◆ペーパー「エウロパの海」Vol.5が出ます。
世界の外側の花守のお話です。よろしければ、こちらもお持ち帰りください。
とりあえず表しか刷っていませんが、9/18文フリ大阪にて、こんな感じのSSペーパーが出るみたいです。よかったらお持ち帰りください。世界の外側の花守のお話です。 pic.twitter.com/VxP48hyjbp
— くらげ@文フリ大阪D21 (@k_tsukudani) 2016年9月6日
◆豆本を委託販売します。
風鳴月~かざめいげつ~さまの豆本ストラップをお預かりします。
とても可愛らしい御本ですので、ぜひお手に取ってご覧ください。
◆無配本あります。
7/18にありました「尼崎文学だらけ」にて発行した無配本「待ち合わせは、雪の夜に。」
少しですが残部ありますので持っていきます。
よろしければ、お持ち帰りください。
https://twitter.com/k_tsukudani/status/747409314462187520
◆既刊「夜さりどきの化石たち」「星の指先」も持っていきます。
こちらも、試し読みできますので、よろしければご覧ください。
>「夜さりどきの化石たち」
ブランペイン彗星の足跡 - 【Sample】夜さりどきの化石たち
>「星の指先」
ブランペイン彗星の足跡 - 【Sample】小説『星の指先』
◆(追記)文字スケブやってます。
当日は、いつもどおり「文字スケブ」やってます。
・ノートやスケブなどをお預かりして、200字~300字くらいの短いお話を書かせて頂きます。
・ご依頼の際には、何かお題をください。
・時間帯によりお受けできない場合もありますが、ご了承ください。
こんな感じです。
当日は、お声がけいただけるだけでも嬉しいですので、お気軽にお立ち寄りください。
【更新連絡】二次創作関係
この記事では文スト二次創作関係だけぽいぽい置いとくので、興味ないよーという方はスルーお願いします。文ストの2つめ以降に投稿したものからもう滞っていたので、まとめて貼ります。相変わらず、怒られたら謝るスタンスで好き放題やっています。
書けば書いたぶんだけこのCPは増えるんだろ...というアレで見境無く書いておりますが、一番上のと最後のがお気に入り。
一番上の「誤答~」は、敦太にハマってひとまずこの子たちどんなCPなのかなーって思いつつ書いたやつです。
最後の「この濡れた肺に~」は、疲れたときに書いた何かそういうアレです。疲れると解剖がどうこう言い出すのが私です。
文フリのお知らせ、その他もろもろ
8月中ここの更新をサボっていたせいで色々溜まっています。一応ここ、あっちこっちにぽいぽいやってるあれこれをまとめて記録していくところのはずなんですけれど。
【お知らせ】(9/18)文学フリマ大阪に出ます。(カタログとお品書き)
D-21「エウロパの海」にてお待ちしております。新刊とか、合同誌とか、委託品とか、ペーパーとか色々あるんですが、それは明日にでも改めて一個ずつご紹介するとしまして、ひとまずカタログとお品書きが形になったので、ちら見でもしていただけると幸い。
公式WEBカタログはこちら。試し読みもできます。
ざっくりしたお品書きはこちら。
【更新状況】一次創作関係
更新記録が滞っていたのでまとめて。
・ペーパー「エウロパの海vol.4」、配布終了に伴いWEB掲載しました。南半球の海岸の、短いお話です。
・宮沢賢治童話村に行きまして、そのときの素晴らしきライトアップの写真をどうにかこうにかしようと悪あがきした結果がこちらです。
ブランペイン彗星の足跡 - 宮沢賢治童話村のライトアップに行ってきました。もうここからどこにも行きたくないほど素敵な場所でしたが、...
二次創作関係はちょっと別記事上げます。
あまぶん、コミティア、文フリ大阪のこと
7/18尼崎文学だらけ、ありがとうございました。
色々企画も多く、面白いサークルさんも沢山で、目いっぱい楽しませていただきました。お会いしたい方にお会いでき、素敵な本と出合うこともできて、近隣のサークルさんとお喋りしたり、スケブやノートを書かせていただいたり(私も持っていけばよかった)、いいイベントだったなあ、と思います。
この規模のイベント参加が初めてだったので、頒布数が全く読めなかったのですが、大規模イベントくらいとまではいかなくても、沢山の方にお手に取っていただくことができました。
それから、今回はじめてフルカラー冊子を無料配布したのですが、多くの方にお持ち帰りいただけてほっとしております。
で、この無料配布冊子なのですが、今回の残りは9/18文学フリマ大阪に持っていきます。残部は少しとなっていますので、気になる方はお早めにお越しください。
8/21コミティア117(東京)
スペースNo【K30a】「Day Dream Tellers」様に『星の指先』を委託します。
首都圏でのイベント頒布は初ですので、ぜひよろしくお願いします。
サンプル、こんな感じです。
ブランペイン彗星の足跡 - 【Sample】小説『星の指先』
9/18文学フリマ大阪
【D21】「エウロパの海」(小説/SF)にてお待ちしております。
新刊は鋭意執筆中です。
静かで、透明で、雪が降っていると思います。
寄稿させていただいた合同誌も発行予定なので、
それもまた改めてご紹介していきたいです。
今年のイベント参加は、この文フリ大阪で終了となります。
よろしくお願いします。